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2.1.6 オペラと舞台ミュージカル
通常、オペラや舞台ミュージカルの音楽、歌詞、それに会話は、以下の形式の 1 つまたは複数により構築されます:
- A 指揮譜 はフル オーケストラとボーカル パート、台詞がある場合は台詞の合図を保持します。
- オーケストラ パート はオーケストラやバンドの個々の楽器の音楽を保持します。
- ボーカル譜 は全てのボーカル パートとピアノ伴奏を保持します。通常、伴奏はオーケストラの縮小版であり、しばしばオーケストラのオリジナルの楽器名が示されます。ボーカル譜に舞台指示や台詞の合図が含まれることもあります。
- ボーカル ブック はボーカル パートだけを保持します (伴奏はありません)。台詞の合図が含まれることもあります。
- 台詞 はミュージカルの台詞と歌詞を保持します。普通は、舞台指示が含まれます。LilyPond で台詞を譜刻することはできますが、台詞には音楽が無いため、他の手段を用いる方が好ましいかもしれません。
オペラや舞台ミュージカルに共通するスタイルの楽譜を作り出すのに必要なトピックスをカバーしているLilyPond ドキュメントのセクションを以下のリファレンスで示します。その後のセクションでオペラや舞台ミュージカルの譜刻に特有のテクニックをカバーします。
オペラや舞台ミュージカルのためのリファレンス | ||
役名 | ||
合図 | ||
Spoken music | ||
音楽の中での会話 |
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オペラや舞台ミュージカルのためのリファレンス
- 指揮譜は多くのグループ化された譜と歌詞を保持します。譜をグループ化する方法は 譜をグループ化する で説明しています。譜のグループをネストする方法は ネストされた譜グループ を参照してください。
- 指揮譜とボーカル譜では、空の譜の譜刻を抑制することがあります。そのような “Frenched score” を作成する方法は 譜を隠す を参照してください。
- オーケストラ パートを記述する方法は パートを記述する でカバーしています。オーケストラの楽器編成によっては、専門的な記譜法の他のセクションも関係するかもしれません。多くの楽器は移調楽器です – 楽器の移調 を参照してください。
- ページのシステム数をページ毎に変える場合、慣習的にシステムの間にシステム分離記号を配置します。Separating systems を参照してください。
- 他のページ フォーマット プロパティの詳細は ページ レイアウト を参照してください。
-
台詞の合図、舞台指示、それに脚注を挿入することができます
– 脚注を作成する と テキスト を参照してください。2 つの
\score
の間に独立したセクションとして詳細な舞台指示を追加することもできます – 独立したテキスト を参照してください。
参照
音楽用語集: Frenched score, Frenched staves, transposing instrument
記譜法リファレンス: 脚注を作成する, 譜をグループ化する, 譜を隠す, 楽器の移調, ネストされた譜グループ, ページ レイアウト, Separating systems, 移調, パートを記述する, テキストを記述する
コード断片集: Vocal music
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役名
通常、1 つの役に割り当てられている譜には左側に役名を示します:
\score { << \new Staff { \set Staff.vocalName = \markup \smallCaps Kaspar \set Staff.shortVocalName = \markup \smallCaps Kas. \relative { \clef "G_8" c'4 c c c \break c4 c c c } } \new Staff { \set Staff.vocalName = \markup \smallCaps Melchior \set Staff.shortVocalName = \markup \smallCaps Mel \clef "bass" \relative { a4 a a a a4 a a a } } >> }
複数の役が 1 つの譜を共有する場合、それぞれの役に適用されるセクションの開始時に、その役名を譜の上に譜刻します。 これは、マークアップで実現できます。しばしば、この目的のために専用のフォントを用います。
\relative c' { \clef "G_8" c4^\markup \fontsize #1 \smallCaps Kaspar c c c \clef "bass" a4^\markup \fontsize #1 \smallCaps Melchior a a a \clef "G_8" c4^\markup \fontsize #1 \smallCaps Kaspar c c c }
役の入れ替えが頻繁にある場合、最上位階層でそれぞれの役に対して “楽器” 定義をセットアップして、役の入れ替えを \instrumentSwitch
を用いて示す方が簡単かもしれません。
\addInstrumentDefinition #"kaspar" #`((instrumentTransposition . ,(ly:make-pitch -1 0 0)) (shortInstrumentName . "Kas.") (clefGlyph . "clefs.G") (clefTransposition . -7) (middleCPosition . 1) (clefPosition . -2) (instrumentCueName . ,(markup #:fontsize 1 #:smallCaps "Kaspar")) (midiInstrument . "voice oohs")) \addInstrumentDefinition #"melchior" #`((instrumentTransposition . ,(ly:make-pitch 0 0 0)) (shortInstrumentName . "Mel.") (clefGlyph . "clefs.F") (clefTransposition . 0) (middleCPosition . 6) (clefPosition . 2) (instrumentCueName . ,(markup #:fontsize 1 #:smallCaps "Melchior")) (midiInstrument . "choir aahs")) \relative c' { \instrumentSwitch "kaspar" c4 c c c \instrumentSwitch "melchior" a4 a a a \instrumentSwitch "kaspar" c4 c c c }
参照
記譜法リファレンス: 楽器名, Scheme functions, テキスト, Text markup commands
LilyPond の拡張: Markup construction in Scheme
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合図
入りの直前にある他のパートの音楽を示すため、合図をボーカル譜、ボーカル ブック、それにオーケストラ パートに挿入することができます。さらに、合図はボーカル譜のピアノ伴奏にもしばしば挿入され、どのオーケストラ楽器が演奏されるのかを示します。これはフルの指揮譜を使用できない場合に、指揮者の助けとなります。
合図を挿入する基本的な仕組みはメインのテキストで完全に説明しています – 他のボイスを引用する と テキストをフォーマットする を参照してください。しかしながら、多くの合図を挿入する必要がある場合 – 例えば、ボーカル譜のピアノ伴奏に楽器名を入れる場合、楽器名を合図音符の直前に注意深く配置する必要があります。以下の例は、これを実現する方法を示しています。
flute = \relative { s4 s4 e'' g } \addQuote "flute" { \flute } pianoRH = \relative { c''4. g8 % 合図音符の楽器名を、合図音符の直前、かつ譜の上に配置します \new CueVoice { \override InstrumentSwitch.self-alignment-X = #RIGHT \set instrumentCueName = "Flute" } \cueDuring "flute" #UP { g4 bes4 } } pianoLH = \relative { c4 <c' e> e, <g c> } \score { \new PianoStaff << \new Staff { \pianoRH } \new Staff { \clef "bass" \pianoLH } >> }
移調楽器が引用される場合、その楽器の合図音符が自動的に変換されるよう、楽器パートでキーを指定しておく必要があります。以下の例は B-フラットのクラリネットの移調を示しています。この例では合図音符は譜の下方に配置されるため、\cueDuring
の中で DOWN
を指定し
(これにより、符幹が下向きになります)、楽器名を譜の下に配置しています。ピアノの右手のボイスを明示的に宣言していることにも注意してください。これは、この例の合図音符は最初の小節の先頭から始まるため、明示的に宣言しないとピアノの右手のボイス全体が
CueVoice
コンテキストの中に配置されてしまうからです。
clarinet = \relative c' { \transposition bes fis4 d d c } \addQuote "clarinet" { \clarinet } pianoRH = \relative c'' { \transposition c' % 合図音符の楽器名を譜の下に配置します \new CueVoice { \override InstrumentSwitch.self-alignment-X = #RIGHT \override InstrumentSwitch.direction = #DOWN \set instrumentCueName = "Clar." } \cueDuring "clarinet" #DOWN { c4. g8 } g4 bes4 } pianoLH = \relative { c4 <c' e> e, <g c> } \score { << \new PianoStaff << \new Staff { \new Voice { \pianoRH } } \new Staff { \clef "bass" \pianoLH } >> >> }
上記の 2 例から、ボーカル譜に多くの合図を挿入することは退屈な作業で、入力ファイルでピアノ パートの音符が不明瞭になることは明白です。しかしながら、以下のコード断片で示すように、タイピングを減らして、ピアノの音符を明瞭にする音楽関数を定義することが可能です。
Selected Snippets
Adding orchestral cues to a vocal score
This shows one approach to simplify adding many orchestral cues to the
piano reduction in a vocal score. The music function \cueWhile
takes four arguments: the music from which the cue is to be taken, as
defined by \addQuote
, the name to be inserted before the cue
notes, then either #UP
or #DOWN
to specify either
\voiceOne
with the name above the staff or \voiceTwo
with the name below the staff, and finally the piano music in parallel
with which the cue notes are to appear. The name of the cued
instrument is positioned to the left of the cued notes. Many passages
can be cued, but they cannot overlap each other in time.
cueWhile = #(define-music-function (instrument name dir music) (string? string? ly:dir? ly:music?) #{ \cueDuring $instrument #dir { \once \override TextScript.self-alignment-X = #RIGHT \once \override TextScript.direction = $dir <>-\markup { \tiny #name } $music } #}) flute = \relative c'' { \transposition c' s4 s4 e g } \addQuote "flute" { \flute } clarinet = \relative c' { \transposition bes fis4 d d c } \addQuote "clarinet" { \clarinet } singer = \relative c'' { c4. g8 g4 bes4 } words = \lyricmode { here's the lyr -- ics } pianoRH = \relative c'' { \transposition c' \cueWhile "clarinet" "Clar." #DOWN { c4. g8 } \cueWhile "flute" "Flute" #UP { g4 bes4 } } pianoLH = \relative c { c4 <c' e> e, <g c> } \score { << \new Staff { \new Voice = "singer" { \singer } } \new Lyrics { \lyricsto "singer" \words } \new PianoStaff << \new Staff { \new Voice { \pianoRH } } \new Staff { \clef "bass" \pianoLH } >> >> }
参照
音楽用語集: cue-notes
記譜法リファレンス: オブジェクトを揃える, 向きと配置, 合図音符をフォーマットする, 他のボイスを引用する, 音楽関数を使用する
コード断片集: Vocal music
内部リファレンス: InstrumentSwitch, CueVoice
既知の問題と警告
\cueDuring
は自動的に CueVoice
コンテキストを挿入し、すべての合図音符がこのコンテキストの中に配置されます。このことは、この方法では 1 つの合図音符の途中には他の合図音符を挿入することはできないということを意味します。これを行うには、別々の CueVoice
コンテキストを明示的に宣言して、合図音符の抽出と挿入に \quoteDuring
を用います。
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Spoken music
‘parlato’ や ‘Sprechgesang’ などのエフェクトは、演者にピッチを持たずに、しかしながらリズムを持ちながら話すことを要求します。これは、特殊な符頭 で示すように、×の符頭で記譜します。
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音楽の中での会話
通常、音楽の中での会話は譜の上にイタリック体で譜刻され、各フレーズの開始は特定の音楽イベントに紐付けられます。
短いフレーズであれば、単純なマークアップ接尾辞を用います。
\relative { a'4^\markup { \smallCaps { Alex - } \italic { He's gone } } a a a a4 a a^\markup { \smallCaps { Bethan - } \italic Where? } a a4 a a a }
長いフレーズの場合は、フレーズをきちんと収められるよう楽譜を拡張する必要があるかもしれません。 LilyPond はこれを完全に自動的に行う機能を備えておらず、ページをレイアウトするために何らかの手作業が必要です。
密に詰め込まれた長い会話を持つフレーズやパッセージでは、Lyrics コンテキストを用いると良い結果を得られます。この Lryics コンテキストをボイスに関連付けすべきではなく、代わりに会話の各セクションの演奏時間を明示的に指定します。会話にずれがある場合、会話から最後の言葉を分離させて、それぞれに演奏時間を割り当てることで、下の音楽に対してスムーズに配置されます。
会話が複数行に広がる場合、手動で \break
を挿入して、右マージンが不足しないよう会話の配置を調節する必要があります。各行の最終小節に配置される最後の単語も上記と同様に分離させる必要があります。
ここで、これまで述べてきたことを行う例を挙げます:
music = \relative { \repeat unfold 3 { a'4 a a a } } dialogue = \lyricmode { \markup { \fontsize #1 \upright \smallCaps Abe: "Say this over measures one and" }4*7 "two"4 | \break "and this over measure"4*3 "three"4 | } \score { << \new Lyrics \with { \override LyricText.font-shape = #'italic \override LyricText.self-alignment-X = #LEFT } { \dialogue } \new Staff { \new Voice { \music } } >> }
参照
記譜法リファレンス: 歌詞音節の手動演奏時間, テキスト
内部リファレンス: LyricText
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